△青少年対策講座 《みんなで育む子どもの心》 平成 16 年  11 月 22 日(土)

講師 黒川和子氏(大阪少年鑑別所 所長) 場所 吹田市立豊津第二小学校

今年 3 月東京女子少年院から、大阪少年鑑別所に転任してきた黒川和子所長による講座が、豊津第二小学校にて開かれた。

こういった講座にしては珍しく(といってはなんだが)満員の状態で、女性と男性の比率も半々といったところ。しかしよくよく観察すると、青少年対策委員らしきかなり年配の男性や、PTAから「半ば強制的に」出席させられた役員方ばかりのようで、私のような、肩書きなしの一主婦が、自分の興味だけにひかれてふらりと現れた、というのは明らかに少数派であった。

おかしなことだ。子どもと毎日毎日対峙し、その付き合い方に苦慮している子育て戦争真っ只中の母親や父親の姿がほとんど見当たらないなんて。講師が一番語りかけたい相手はそういう人たちであろうに。などというひねくれた感想をしょっぱなから抱きつつ、講師の話に耳を傾けることとなった。

少年院が犯罪を犯した少年を矯正する場である、というのは周知の事実だが、「鑑別所」というのは意外とその役割を知られていない。

文字通り「鑑別所」とは、少年を「観察し」、その今後の処遇を「決定する」機関である。健康診断や精神鑑定、その他各種の試みを通して、その少年についての調査を独自で行うのである。ただ少年を「預かっている」だけの場所のようにマスコミ等で形容されるのが不可解だと、講師は述べていた。

鑑別所は、いわゆる教育的指導を目的とするのではなく、その少年が現在置かれている悪い状況から抜け出す手助けをすることに主眼が置かれている。それが結果的に教育的な効果となって現れることも、もちろん多い。

講座では鑑別所での少年の処遇についてかなりの時間が割かれていたが、ここではそれを割愛し、大勢の(犯罪を犯してしまった)少年達と接し、自らも悩みながら子育てしてきた経験を元に黒川氏が語った「子育てにとって大事なこと」について、特に記したいと思う。

家庭は子どもにとって「よりどころ」になる場であってほしい

有名なスヌーピーの漫画の1シーン。チャーリー・ブラウンが野球の試合でしくじって、辛らつなルーシーに「あんたのせいよ」となじられる。おなじみのシチュエーションだ。

試合後チャーリー・ブラウンがとぼとぼ歩きながら、ふいと口にした言葉は

「でも、お母さんはぼくのことを好きだと言ってくれる。」

そしてチャーリー・ブラウンは明るい気持ちをとりもどし、家にむかって歩き続ける。

この講師の例示を聞きながら、ドジでさえないこの小さな子どもに勇気を与えたのが「お父さん」であっても、「おじいちゃん」「おばあちゃん」「お姉ちゃん」「お兄ちゃん」でもいいのであろう、と思った。

家庭というものが、何があっても最後に逃げ込める、どんな自分であっても無条件で受け止めてくれる場でさえあれば、子どもたちはどんなにか安心して生きていけるだろう。

子どもが必要としているものに気づく

黒川氏は仕事柄転勤が多かった。

環境の変化が自分自身の子どもに与える影響を心配しながらも、仕事の忙しさの前では家庭を顧みることがなおざりになってしまっていた、とふりかえる。

ある日子どもが「お母さん 夢を見たの」と話しかけてきた。

「隣町まで行ったら迷子になってね。お母さんに電話をしたけどつながらないし。おかしいなと思ったら電話線が切れていたの。」

この言葉を聞いた黒川氏は愕然としたそうだ。仕事の上でたくさんの子どもたちの身の上を案じ、心をくだいていながら、一番身近にいる自分の子どもの不安な気持ちには気づいてやれなかったのだと。

その上、子どもは転校すると、必ず決まったように 6 月頃熱を出して学校を休むようになった。そんな時黒川氏は思い切って仕事を2〜3日休み、じっくり子どもと話したり、甘やかす時間を作ったという。そうすると不思議なほど子どもは充電されたように元気になったそうだ。

機能していない家庭に育ってしまったら

しかし、鑑別所や少年院で出会う子どもたちの多くは、家庭としての機能も失っているような環境で育っている。虐待されて育った子どもたちも多い。そんな子どもたちに温かな家庭を与える、ということは残念ながらむずかしい。ではどうすれば?

 やはり「地域」で子どもを支えていくしかないのではないか。児童館などの公共の場に期待するのはもちろんのこと、どんな場所でも、子どもに関わった大人たちが

「人生というのは、決して悪いことばかりではないんだよ」と少しでも子どもに伝えることが非常に重要なのだ。と、黒川氏は語っていた。そして

「悪(ワル)を気取っている子どもも、決してその悪を楽しんでいるわけではないのです。」

という言葉を、きっと私もこの先折にふれ思い出すだろう。         (M)

 

 


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